薬には重要な役割があります。しかしそれは「病気を治すこと」ではありません。何故なら、薬は病気そのものには効かないからです。病気を身体から排除するのは、あくまでも免疫メカニズムであり、薬のはたらきは「症状を抑えること」にあります。症状が軽ければ、そのまま放置しても構わないのですが、時には日常生活に支障をきたすほどの苦しみに襲われることがあります。そのような時に、薬が症状を和らげてくれるのです。つまり病気そのものに打ち勝つためには、症状を抑えることではなく、免疫メカニズムを活性化することが重要だと言えます。免疫メカニズムとは、動物の身体が具えた自然治癒力を指しており、このメカニズムのおかげで傷は治り、風邪も治まるのです。薬は免疫メカニズムを助けるどころか、阻害する毒物であり、薬剤師を目指す学生は皆その事実を学びます。投薬治療に期待し過ぎるのは禁物だということが、お分かりいただけたことでしょう。
 薬の歴史は長く、1万年以上遡ってもその存在が認められます。しかし人類の歴史はそれを遥に上回る、700万年間の蓄積です。この事実から言えるのは、人間と薬との関係を相対的に判断すべきだということです。薬が無くても生活を営めた時代があったのです。薬が誕生してからも、その薬が植物の磨り潰しであった時代が長く続いたわけですから、現在の人工的な薬の歴史は大変浅いものだと言えるでしょう。