「薬」に対して抱くイメージは人それぞれでしょうが、共通点は「治療に貢献する」との漠としたものに違いありません。確かに薬が治療に役立つこともありますが、薬の働きにはそうした正の側面のみならず、負の側面もあることをご存知でしょうか。医療関係者の中には、薬を否定的に捉える人が珍しくありません。というのも、薬は人の健康に悪影響を及ぼす可能性があるからです。最近は医療関係者によるこの種の告発が後を絶たず、書店にも関連書籍が並んでいます。それらの書籍で展開されている啓蒙の共通点は、「薬は病気そのものには効かない」というものです。どういう意味でしょうか。
 我々は病気に罹ると苦しみます。しかしその苦しみは病気そのものではなく、身体の免疫反応に他なりません。つまり薬で抑制するのは免疫反応であって、病気自体ではないのです。薬剤師なら常識とも言えるこの事実が、人口に膾炙しているとも言えないのが実情であり、薬を崇めている人も少なくないことに危機感を覚えます。薬への依存が強まると、まるでサプリメントのように気軽に呑んでしまう可能性があります。大病を患っているわけでもないのに、少し気分が悪くなった程度で薬に手を伸ばしてしまう人が現れかねないのです。
 頭痛を抱えている人に頭痛薬を勧めるのは、優しいが故の行為なのでしょうが、安易に呑んでよい頭痛薬など存在しません。微熱が出るとすぐに風邪薬を服用する人もいますが、寝れば治る風邪のために薬を呑むのは馬鹿げています。しかし市井の一部の人の間では、それが周到な対策であると思われているようで、花粉症の時期ともなると、大量のアレルギー薬を持ち歩く人まで出てくるのです。最近はお洒落な薬箱まで販売されており、目を覆いたくなるような有様です。