薬のCMの巧みな点は、「この薬を呑めば風邪が治る」とは宣伝していないことです。製薬会社は薬の効用の実際を知っていますから、「薬が病気そのものに効くわけではない」という事実に適合した誘い文句を捻り出しているわけです。薬事法も薬類の効用の記載の仕方を厳格に定めており、同法の遵守がCMの前提となっています。視聴者の多くはこうした事情を知らないことから、CMの曖昧な表現に簡単に騙されてしまいます。まるでその薬が風邪を治してくれるかのように錯覚してしまうのです。CMの文句は法的には問題ないのでしょうが、倫理的にはグレーだと言わざるを得ません。
 実際、CMが招いている誤解は沢山あり、その一つが、薬を呑み始める時期に関するものです。薬は病気に直接効くのではありませんから、?み始めるタイミングに意味はありません。いつ呑んでも罹患期間を左右しないわけです。しかしCMから受ける印象は、「早く呑み始めた方が治りも早い」というものでしょう。この印象が強固であればあるほど、薬に頼ろうとする人が量産されてしまいます。
薬に頼り始めて年月が経過すると、自分の身体の調子、つまり免疫メカニズムが正常に作動しているかどうかを感得することが出来なくなります。本来免疫メカニズムを司る免疫細胞は、身体の様々な組織と協働して病気の撲滅に勤しんでいます。その闘いの結果として、「症状」が発生します。典型例は炎症反応で、他の不調も全て免疫メカニズムが作動しているから感じられるわけです。もし薬で症状を押さえてしまうと、楽にはなりますが、免疫メカニズムを実感することが出来なくなります。

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